相続した土地の使い道

土地を貸し農園・市民農園にするには 特定農地貸付法の承認と市民農園整備促進法の認定

内容の確認日: 2026年11月3日

土地を区画に分けて人に貸す貸し農園(市民農園)は、農地を貸すときの手続きで道が分かれます。利用者に農地を貸す貸付方式は、原則として特定農地貸付法に基づく農業委員会の承認が要ります。農園の指導をして農作業をしてもらい、農地は貸さない農園利用方式は、農地法などの手続きが要りません。

農機具庫や休憩所などの施設もつくるなら、市民農園整備促進法に基づく市町村の認定という選び方もあります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は農業委員会や市町村の農政担当の窓口にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

貸付方式と農園利用方式の違い

農林水産省のパンフレット「市民農園をはじめよう!」(令和8年度版)は、市民農園の開設方式を大きく2つに分けています。

鎌倉市の野菜畑
写真: 妖精書士 / CC0(Wikimedia Commons)
  • 貸付方式: 利用者に農地を貸す方式。原則として特定農地貸付法の手続きが必要で、生産緑地では都市農地貸借法も使える。
  • 農園利用方式: 利用者に農地を貸さず、園主の指導のもとで利用者が継続的に農作業を行う方式。「農業体験農園」と呼ばれる農園がこの方式にあたる。

農園利用方式は、利用者に農地の権利を設定したり移したりしないため、農地法などの手続きは要りません。ただし、開設者が農地の権利を取得して始める場合は、農地法3条の許可などが必要です。同じパンフレットは、法律上の規制がない方式としています。

ここから先は、利用者に農地を貸す貸付方式を中心に説明します。農地を貸す側の農地法の手続きは、農地を貸す・転用するときの記事で扱っています。

特定農地貸付法の要件と承認の手続き

特定農地貸付けは、特定農地貸付法2条で、一定の要件を満たす農地の貸付けと定められています。パンフレットは、要件を次のように説明しています。

住宅地のそばに広がる茨城県の水田
写真: LERK / CC BY 3.0(Wikimedia Commons)
  • 貸付けの面積は、利用者1人あたり10アール(1,000平方メートル)未満。農園全体の面積に上限はない。
  • 利用者は複数人である。
  • 開設者から利用者への貸付期間は、5年を超えない。
  • 利用者の農作物の栽培が、営利を目的としない。

営利を目的としない栽培とは、販売を禁止する意味ではありません。パンフレットは、利用者が栽培した作物のうち自家消費を超える分は販売できるとしています。また、営利を目的としてはならないのは利用者の栽培で、開設者が農園を開く目的は営利でも差し支えないと書いています。

手続きの中心は農業委員会の承認です。特定農地貸付法3条は、貸付けを行う人が、貸付規程を添えた申請書を農業委員会に出して承認を求めると定めています。貸付規程には、次の事項を書きます。

  • 農地の所在、地番、面積
  • 利用者の募集と選考の方法
  • 貸付けの期間その他の条件
  • 農地の適切な利用を確保する方法

地方公共団体と農業協同組合以外の人が開設する場合は、貸付協定も必要です。自分の農地で開設する人は、承認の取消し後の農地の適切な利用の方法などを定めた貸付協定を、農地の所在地の市町村と結びます。パンフレットの図では、貸付協定が申請書に添付する書類です。

農地を借りて開設する人は、農地の所有者から直接借りられません。パンフレットは、地方公共団体か農地中間管理機構を間に入れる必要があると書いています。農家以外の人が農地を借りて始める場合は、この点を最初に確かめます。

農業委員会は、農地が適切な位置にあるか、募集と選考の方法が公平かなどを見て承認します。パンフレットは、承認を受けられない例として、まとまった農地のある地域で農園が農業者の農地の利用を分断する場合や、特定の人に利用が集中する募集の場合を挙げています。

農機具庫やトイレをつくるなら市民農園整備促進法

農地に農機具庫や休憩所などを置くと、農地の転用の手続きが別に要ります。市民農園整備促進法の手続きをとると、施設も含めて1つの手続きで進められます。

横浜市の農業専用地区の農地
写真: 妖精書士 / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

パンフレットによると、この手続きは次のようなものです。開設者が整備運営計画をつくり、市町村から開設の認定を受けると、次の扱いになります。

  • 農地の貸付けについて、特定農地貸付法(または都市農地貸借法)の承認を受けたとみなされる。
  • 市民農園施設の整備に必要な農地転用について、農地法4条1項、5条1項の許可があったとみなされる。
  • 休憩施設などの開発行為について、都市計画法に基づく開発許可が可能になる。

市民農園施設の例は、農機具収納施設、トイレ、手洗場、水飲場、駐車場、園路、掲示板、柵、照明のほか、管理事務所、休憩施設、農作業講習施設、簡易宿泊施設です。

認定には前提の手続きがあります。都道府県が市民農園整備基本方針を決め、市町村が市民農園区域を指定します(市街化区域では不要)。区域の要件は、相当規模の一団の農地があること、周辺の農業の効率的な利用に支障がないこと、利用者が相当程度見込まれることです。パンフレットは、郊外に施設と一体で農園を整備する場合に向くとしています。整備促進法を使わず、農地転用を個別にとって施設を整えることもできます。

相続税の納税猶予を受けている農地は貸す前に確認する

相続した農地には、相続税の納税猶予を受けているものがあります。パンフレットは、納税猶予を受けている農地を市民農園の開設者や利用者に貸すと、原則として猶予の期間が確定し、猶予税額と利子税を納める必要があると注意しています。

田畑の向こうに建つ団地
写真: Ebiebi2 / パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

例外として、生産緑地について次の貸付けをするときは、納税猶予が続きます。貸し付けたあと2か月以内に、所轄の税務署へ届け出ることが必要です。

  • 特定都市農地貸付けのための貸付け
  • 自分の農地での特定農地貸付け(貸付協定に追加の記載が必要)
  • 特定農地貸付けのための、地方公共団体と農業協同組合への貸付け
  • 認定を受けた事業計画に基づく、農園利用方式の開設者への貸付け

自分の農地で農園利用方式の市民農園にする場合は、農地の権利の設定や移転がないため、猶予の期限は確定しないとされています。猶予を受けている農地の扱いは、税務署や税理士に確認します。生産緑地の扱いは生産緑地の記事に書きました。

開設の前に確かめる順番

パンフレットが示す一般的な流れは、開設の方法の検討、開設場所の選定、農地所有者との交渉、農園の設計(区画の大きさ、施設の配置、利用内容、管理・指導体制)、開設手続き(申請書の提出)、開設の準備(農地の整備、利用者の募集)です。実際には順番どおりに進まず、同時に進めることも多いと書かれています。

稲が実る田と隣の住宅
写真: Maarten Heerlien / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)

土地の持ち主の立場では、先に次の点を確かめると手戻りが減ります。

  1. その土地が農地かどうか。農地なら、貸付方式は農業委員会の承認が必要。
  2. 自分で開設するか、地方公共団体や農業協同組合、事業者に農地を貸して開設してもらうか。
  3. 施設をつくるか。つくる場合は農地転用か、整備促進法の認定か。
  4. 相続税の納税猶予や、生産緑地の指定を受けていないか。

農地でない土地に貸し農園をつくる場合の手続きは、このパンフレットでは説明されていません。市町村の農政担当か農業委員会に、先に聞いてください。

貸し農園は、ほかの使い道とも並べて比べます。駐車場や賃貸住宅などの収支を、複数の会社のプランで比べる方法があります。

使い道の選び方は相続した土地の使い道の選び方の記事に、市街化調整区域の土地の場合は市街化調整区域の記事にまとめました。

出典

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