サブリース(一括借り上げ)契約はどう規制されているか 賃貸住宅管理業法の勧誘規制と契約前の説明
サブリース(一括借り上げ)の契約は、賃貸住宅管理業法で規制されています。広告で実際より有利に見せることと、事実を告げない勧誘は禁止です。契約を結ぶ前には、リスクを書いた書面を渡して説明することが、サブリース業者に義務づけられています。
規制は業者だけでなく、サブリース業者から勧誘を任された建設会社や不動産会社にも及びます。特に確かめたいのは家賃の減額です。「家賃保証」とあっても、借地借家法32条により、業者から減額を請求される場合があります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は弁護士や賃貸住宅に詳しい専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。
規制の対象になる契約と事業者
賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)は、サブリースの契約を「特定賃貸借契約」と呼びます。賃貸住宅の賃貸借契約のうち、借りた側が第三者に転貸する事業を営むことを目的にするものです。国土交通省の資料では、マスターリース契約とも呼ばれます。

契約の当事者は2者です。部屋を貸して家賃を受け取るオーナーと、それを借りて入居者に転貸するサブリース業者です。法律はサブリース業者を「特定転貸事業者」と呼びます。
この法律が、サブリースの勧誘に関して設けている決まりは、次の4つです。
- 誇大広告等の禁止(28条)
- 不当な勧誘等の禁止(29条)
- 契約を結ぶ前の書面の交付と説明(30条)。契約を結んだときの書面の交付(31条)
- 業務と財産の状況を記した書類の閲覧(32条)
国土交通省の制度概要ハンドブック(令和3年4月発行、令和6年6月改訂)によると、この規制の対象は、サブリース業者だけではありません。「勧誘者」も含まれます。勧誘者とは、サブリース業者がマスターリース契約の締結の勧誘を行わせる者のことです。
ハンドブックは、勧誘者の例として次のような場合を挙げています。
- 建設会社や不動産会社などが、サブリース業者から勧誘の委託を受けて、そのマスターリース契約を前提にした提案をしたり、契約を勧めたりする。
- サブリース業者が顧客を勧誘するために作った資料を使って、賃貸事業計画を説明する。
勧誘者が「自発的に勧誘しているだけで、依頼は受けていない」と言っても、規制は適用されるとハンドブックは書いています。
禁止される広告と勧誘
28条は、サブリースの条件を広告するときに、家賃、維持保全の実施方法、契約の解除に関する事項などについて、著しく事実と違う表示や、実際より著しく有利だと誤解させる表示をしてはならないと定めています。

ハンドブックには、問題になりうる表示の例が載っています。
- 「30年家賃保証」「一切収入が下がりません」とだけ書き、定期的な家賃の見直しや、借地借家法に基づく減額請求があることを書かない。
- 「30年間一括借り上げ」「建物がある限り借り続けます」と書き、期間中でも業者から解約できることを書かない。
- 「いつでも自由に解約できます」と書くが、実際は借地借家法が適用され、オーナーからの解約には正当事由が要る。
「家賃保証」のような言葉を使うときは、その言葉の近くに、家賃の見直しがあることと、借地借家法32条により減額されることがある旨を書く必要があるとされています。小さな文字で離れた場所に書いてあるだけでは、足りないという考え方です。
29条は、勧誘の場面の決まりです。契約の判断に影響する重要な事項について、故意に事実を告げないこと、うその内容を告げることを禁止しています。契約の解除を妨げるために行うことも含まれます。
ハンドブックは、事実を告げない行為の例として、次を挙げています。
- 将来の家賃減額のリスクがあることや、期間中でも業者から契約を解除される可能性があること、オーナーからの解約には正当事由が要ることを、あえて伝えない。
- 家賃の見直しの協議で合意できなければ契約が終わる条項を、勧誘のときに告げない。
- 新築当初の数か月間、借り上げ家賃を支払わない免責期間があることを説明しない。
うその内容を告げる行為の例としては、「家賃は将来にわたって保証される」と断定することや、原状回復費用はすべて業者が負担すると伝えることが挙げられています。実際にはオーナーが負担する場合があるためです。
省令に基づく禁止行為もあります。威迫すること、午後9時から午前8時までの電話や訪問による勧誘、深夜や長時間の勧誘、契約しない意思を示した相手への勧誘の継続です。
契約の前に渡される書面と説明の内容
30条は、サブリース業者に対し、契約を結ぶまでに、書面を交付して説明することを義務づけています。オーナーとなる人が承諾すれば、書面の代わりに電磁的方法での提供もできます。専門的な知識や経験があると認められる者などは、対象から除かれます。

ハンドブックは、説明から契約までに1週間程度の期間をおくことが理想的だとしています。期間を短くせざるを得ないときは、重要事項説明書をあらかじめ送るなどして、考える時間を取ることが望ましいとされています。
書面に記載して説明する項目は14あります。主なものを挙げます。
- 契約の期間と、普通借家か定期借家かの別。契約期間は、家賃が固定される期間ではないことも説明する。
- 家賃の額、支払期日、設定の根拠、改定の時期。家賃改定日以外でも、借地借家法に基づく減額請求ができること。
- 家賃の支払いの免責期間があるときは、その旨。
- 維持保全の内容、回数や頻度。維持保全の費用をオーナーとサブリース業者のどちらが負担するか。
- 損害賠償額の予定や違約金。
- 契約の更新と解除。契約が終わったときに、オーナーが転貸人の地位を引き継ぐ定め。
- 借地借家法32条、28条、38条の概要。
31条は、契約を結んだときにも、家賃や契約期間、維持保全の方法、更新や解除の定めなどを書いた書面を、遅れずに交付することを求めています。
家賃の減額と解約の扱い
ハンドブックによると、サブリース契約には借地借家法32条1項(借賃増減請求権)が適用されます。次のどれかの場合には、契約の条件にかかわらず、サブリース業者は家賃を相当な額まで減額するよう請求できます。
- 土地や建物にかかる税などの負担が増減して、家賃が不相当になったとき。
- 土地や建物の価格の上昇や低下、経済事情の変動で、家賃が不相当になったとき。
- 近くの同種の建物の家賃と比べて、不相当になったとき。
空室が増えたことや、サブリース業者の経営が悪化したことだけでは、減額請求の要件に当たらないと書かれています。減額の請求を受けても、オーナーが受け入れなければならないわけではありません。協議で相当な家賃が決まり、合意できなければ最終的には訴訟になります。
「一定期間は減額しない」という内容を契約に入れても、普通借家契約では、この減額請求ができます。ハンドブックは、オーナーがそれを誤解しないよう説明することを求めています。定期借家契約でマスターリース契約を結ぶ場合は事情が違います。家賃を減額しないという特約を定めれば、借地借家法32条の適用はなく、サブリース業者から減額請求ができません。ただし、その場合はオーナーからの途中解約も、原則としてできないと説明することになっています。
普通借家契約の場合、オーナーが更新を拒むときには、借地借家法28条が適用されます。オーナーとサブリース業者の事情や、これまでの経過、建物の現況、立退き料などの申出を考慮して、正当な事由があると認められる場合でなければ、拒めません。「協議のうえ更新できる」と契約書に書いてあっても、オーナーが同意しなければ更新しなくてよい、という意味ではありません。
契約の前に確かめること 気になる行為を見つけたとき
サブリースを前提にしたアパートの提案を受けたときは、ここまでの規制を確認の物差しにできます。契約を結ぶ前に、次の点を書面で確かめます。

- 家賃の見直しの時期と、減額請求がありうる旨の説明があるか。
- 家賃の免責期間の有無。
- 修繕や原状回復の費用は、どこまでがオーナーの負担か。
- 期間中に業者から解約される場合と、オーナーから解約する場合の条件。
- 修繕を業者が指定する施工会社に限る条件がないか。
- 建設や売買の契約より前に、マスターリース契約のリスクの説明を受けたか。
最後の点は、ハンドブックにも書かれています。サブリースを前提に賃貸住宅を建てたり、物件を買ったりする場合、建設請負契約や売買契約を結んだあとでリスクを知ると、すでに多額の債務が発生しています。建設会社や不動産会社には、勧誘の時点で、マスターリース契約のリスクを含めて告げることが求められています。
複数社から提案を取るときも、同じ物差しで並べると違いが見えます。家賃の設定根拠や免責期間、修繕の負担割合を一覧にして、比べてみます。事業収支計画の見方はプランの比べ方の記事にまとめました。
法律に反する行為を見つけたときの窓口もあります。28条から32条までの規定に違反した事業者には、国土交通大臣が是正の指示や業務停止の命令をでき、その旨は公表されます。35条は、誰でも国土交通大臣に対し、特定賃貸借契約の適正化のために必要な措置をとるよう申し出られると定めています。申出を受けた大臣は、必要な調査を行い、内容が事実であれば措置をとらなければなりません。
罰則も定められています。賃貸住宅管理業法の条文では、29条1号の違反(事実を告げない、うそを告げる)は6月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金、またはその両方です。30条と31条の書面の違反は50万円以下の罰金、28条の誇大広告の違反は30万円以下の罰金です。
出典
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/502AC0000000060
- 国土交通省「賃貸住宅管理業法 制度概要ハンドブック」(令和3年4月発行・令和6年6月改訂) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001404841.pdf
- 国土交通省「賃貸住宅管理業法 制度解説(規制の内容・標準契約書等)」 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/system_commentary.html
いずれも2026年11月4日に確認しました。