相続した土地の使い道

相続した家は民泊にできるか 住宅宿泊事業法の要件・年間180日・用途地域と条例

内容の確認日: 2026年11月3日

相続した家で民泊をするには、住宅宿泊事業法に基づいて都道府県知事等に届け出る方法があります。観光庁の資料は、相続で所有していて、現在は常時住んでいないが将来住む予定の空き家を、「住宅」の例に挙げています。ただし、泊められるのは年間180日までです。

用途地域は、住宅宿泊事業なら住居専用地域でも営業できるとされています。ただし、自治体の条例で営業の区域や期間を制限されることがあります。マンションでは管理規約も確認が要ります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は保健所などの届出窓口や行政書士、弁護士などの専門家にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

民泊の3つの制度と住宅宿泊事業法

観光庁の民泊制度ポータルサイトは、いわゆる民泊を行う制度を3つ挙げています。旅館業法の許可(簡易宿所)、国家戦略特区法の認定(特区民泊)、住宅宿泊事業法の届出です。

京都・祇園の町家が並ぶ通り
写真: Moja / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

同サイトの比較表から、主な違いを抜き出します。

表は左右に動かして読めます。

項目旅館業法(簡易宿所)特区民泊住宅宿泊事業法
手続き許可認定届出
住居専用地域での営業不可可能(認定する自治体ごとに制限している場合あり)可能(条例により制限されている場合あり)
営業日数制限なし2泊3日以上の滞在が条件。年間の営業日数の上限はない年間提供日数180日以内(条例で実施期間の制限が可能)

住宅宿泊事業法の3条1項は、都道府県知事等に届出をした人は、旅館業法の許可がなくても住宅宿泊事業を営めると定めています。届出の相手は、保健所を設置する市や特別区のある区域では、その市や区の長です。

住宅宿泊事業は、旅館業法上の営業者以外の人が、宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業で、宿泊させる日数が年間180日を超えないものと、法の2条3項に定められています。180日を超えて営業したい場合は、旅館業法の許可を得る方法を考えることになります。

相続した家が「住宅」にあたる条件

届け出られるのは、法の「住宅」にあたる家屋に限られます。観光庁の資料によると、設備の要件と居住の要件の両方が必要です。

石を載せた板葺き屋根の古い木造民家
写真: タクナワン / CC0(Wikimedia Commons)

設備の要件

台所、浴室、便所、洗面設備の4つが、届け出る住宅に設けられている必要があります。近所の公衆浴場で浴室の代わりにすることはできません。浴室は、浴槽がなくてもシャワーがあれば足り、便所は和式でも洋式でもかまいません。ユニットバスのように、1つの設備に複数の機能があるものも認められます。

居住の要件

次の3つのどれかに当たる家屋であることが求められます。

  • 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
  • 入居者の募集が行われている家屋。民泊をしている間も、分譲(売却)か賃貸で、住居として募集していることが条件です。
  • 随時、所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋

相続した家は、3つ目に当たる場合が多いと考えられます。観光庁の資料は、「随時居住の用に供されている家屋」の具体例として、次のようなものを挙げています。

  • 別荘など、季節に応じて年に数回利用している家屋
  • 休日だけ生活しているセカンドハウス
  • 転勤で一時的に生活の本拠を移しているが、将来再び住むために所有している空き家
  • 相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住することを予定している空き家
  • 生活の本拠ではないが、別宅として使っている古民家

ただし、条件があります。既存の家屋で、所有者などに使用の権限があり、少なくとも年に1回以上は使用している家屋であることです。居住といえる使用の履歴が全くない、民泊専用の新築投資用マンションなどは、これに当たりません。

もう一つ注意したいのは、民泊をしていない期間の使い方です。住宅宿泊事業として人を宿泊させている期間以外に、他の事業に使われている家屋は、法の住宅から除かれます。ただし、人を宿泊させる事業と、人を入居させる事業は、ここでいう他の事業には含まれません。

年間180日の数え方

180日は、1年間に人を宿泊させる日数の上限です。観光庁の資料では、数え方が決まっています。

古い木造住宅が並ぶ細い通り
写真: NevinThompson / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)
  • 1年間は、毎年4月1日の正午から翌年4月1日の正午まで。
  • 1日は、正午から翌日の正午まで。
  • 1泊を1日として数える。
  • 届出住宅ごとに算定する。

つまり、暦年の1月から12月ではありません。4月1日をまたぐ年度の考え方で数えます。住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の15日までに、それぞれの月の前2か月分について、宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数を都道府県知事等に報告します。定期報告は、電子システムを使って行えます。

180日の上限があるため、収入の見込みは、満室を前提にせず、上限の日数で組み立てます。ほかの日は空けておくか、ほかの用途に回すか、貸す形に切り替えるかを、あらかじめ考えておきます。

用途地域と条例で確かめること

観光庁の比較表では、住居専用地域での営業は、旅館業法(簡易宿所)では「不可」、住宅宿泊事業法では「可能」とされています。ただし、住宅宿泊事業法の欄には「条例により制限されている場合あり」と付いています。

並木道の両側に戸建て住宅が並ぶ住宅地
写真: Peka / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

法18条は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生などで生活環境が悪化するのを防ぐため、都道府県(保健所設置市等の区域ではその市等)が、区域を定めて、実施する期間を条例で制限できると定めています。制限は、合理的に必要と認められる限度で、政令の基準に従う必要があります。

一例として、京都市の条例を見ます。京都市が公開している条例の条文(平成30年6月15日施行)によると、第一種・第二種低層住居専用地域と、第一種・第二種中高層住居専用地域が実施制限区域です。制限される期間は、3月16日の正午から翌年1月15日の正午までです。つまり、この地域で営業できるのは、1月15日の正午から3月16日の正午までの間に限られます。

この制限には例外があります。届出住宅を現に生活の本拠として使っている家主居住型で、一定の要件を満たすものと、認定京町家事業は、制限の対象外です。条文は改正されている可能性があるため、現行の内容は京都市の窓口で確認する必要があります。ほかの自治体にも、区域や期間の制限を設けているところがありえます。

条例のほかにも、届け出る前に確かめる点があります。観光庁の手続きの資料には、次の項目が挙げられています。

  • 届出者が賃借人や転借人なら、賃貸人や転貸人が民泊を目的とした転貸を承諾しているか。
  • マンションなら、管理規約で住宅宿泊事業が禁止されていないか。規約で禁止されていなくても、管理組合に禁止の方針がないか。
  • 消防法令適合通知書を入手すること。管轄の消防に相談する。

避難経路の表示などは、市町村の火災予防条例で規制される地域もあります。消防法令に基づく設備や防火管理体制の規制を受ける場合もあるため、届出の前に、管轄の消防に相談します。

届出から運営までの流れと次の行動

届出は、住宅の所在地を管轄する都道府県知事等に出します。観光庁の資料によると、原則として、民泊制度運営システムを使って行います。届出書には、氏名や住所、住宅の所在地、住宅の不動産番号、一戸建てか共同住宅かの別、住宅の規模などを書き、住宅の図面などを添えます。

新潟市西区役所の庁舎
写真: Suikotei / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

届出のあとに、事業者が守る措置もあります。

  • 居室の床面積は、宿泊者1人あたり3.3平方メートル以上を確保し、清掃と換気を行う。
  • 非常用照明器具を設け、避難経路を表示する。
  • 宿泊者名簿を、本人確認をしたうえで作り、作成の日から3年間保存する。
  • 騒音の防止、ごみの処理、火災の防止について、宿泊者に説明する。
  • 近隣住民からの苦情や問い合わせに、適切かつ迅速に対応する。
  • 届出住宅ごとに、見やすい場所に標識を掲げる。

家主が不在になる場合などは、これらの措置を住宅宿泊管理業者に委託する必要があります。委託が必要になるのは、届出住宅の居室の数が5を超える場合と、人を宿泊させる間、不在になる場合です。日常生活で通常行う行為に要する時間の範囲内の不在は、除かれます。遠方にある実家は、家主不在型になりやすいため、管理業者への委託の費用を、収支に入れておきます。

相続した家の使い道は、民泊のほかにも、賃貸、売却、解体して土地を使う方法があります。民泊は日数の上限があり、届出後の運営の手間も続きます。ほかの選択肢と並べて、収支と手間を比べてみます。土地の条件から使い道を絞る方法は使い道の選び方の記事に、貸す場合の契約は実家を貸す記事にまとめました。

最初の相談先は、届出を受け付ける都道府県や保健所設置市の窓口です。観光庁の民泊制度ポータルサイトに、各自治体の情報と窓口の一覧があります。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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